夜空に輝く満天のお星様のように、チェロのアンサンブルを通して煌きたい。
東北チェロアンサンブル「銀河」
東北の地に生まれた新しい音楽の楽しみ方です。

2023ふくしまチェロ・コンサート」に参加しました!

 
 東日本大震災から12年が経過した今年(2023年)5月21日、国内外のプロ・アマ500名のチェリストが参加する「2023ふくしまチェロ・コンサート」が福島市あづま総合運動公園メインアリーナで開催され、東北チェロアンサンブル銀河からも前嶋淳先生はじめ15名のメンバーが参加しました。
 
 このコンサートには宮田大さん、新倉瞳さん、荒井結さんらがメンバーの東京チェロアンサンブルの皆さんや仙台フィル首席の吉岡知広さんなど、24名のトッププロも参加し、地元福島の高校生約60名とともに鎮魂と復興の調べを福島の皆さんに届けました。


 このコンサートに向けて、仙台においては分奏練習会が5回、公式練習が2回開催されました。銀河のメンバーも東北・北海道などから参加した皆さんと一緒に練習に参加し、分奏練習では前嶋先生に、公式練習では指揮者の田中健先生や東京チェロアンサンブルのメンバーに指導を受け、練習を重ねて本番に臨みました。

 コンサートでは、冒頭「アヴェ・マリア」と「チェロのためのレクイエム」を演奏。来場された約1,000人のお客様に大きな感動を届けました。その後は、福島ゆかりのGReeeenの「星影のエール」、福島市出身古関裕而さん作曲の「栄冠は君に輝く」、「長崎の鐘」などの「古関裕而メドレー」、「東北地方民謡メドレー」を高校生の合唱に合わせて演奏し、チェロと合唱のハーモニーを響かせました。

 第2部は東京チェロアンサンブルの「レ・ミゼラブルメドレー」の後に、詩の朗読を挟み「讃歌」を演奏、「アヴェ・ヴェルム・コルプス」では来場者全員が黙祷。最後は 「ふるさと」の合唱で演奏者と来場者がひとつになって震災からの復興や世界平和への祈りを捧げました。コンサート終了時には、スタンディングオベーションによる拍手がいつまでも鳴り響きました。
 
 聴衆の皆さんからは、「全員の合奏が独奏のようでした。構成も素晴らしく、感極まったところもありました」、「500人の力で作り上げた音楽は素敵でした。合唱もチェロの音色にピッタリで福島の高校生を誇りに思いました」、「チェロだけのコンサートは初めてでした。チェロ、とても素敵な楽器ですね」などの感想が寄せられました。
 
 演奏した私たちも貴重な体験をすることができ、それぞれに大きな感銘を受けました。参加者の感想は別掲のとおりです。
 
 コンサートの翌日には福島県内7コースに分かれて、被災地などで演奏するキャラバンコンサートも開催されました。銀河からは前嶋先生とヒューレットえり子さんが福島コースにリーダー及び事務局として参加し、地元の皆さんにチェロアンサンブルの調べを届け、交流を深めました。
 
 今回のコンサートでは、実行委員として伊藤郁子さんと私(高橋 広)が運営に携わり、前嶋先生が仙台分奏練習における指導者及びキャラバン福島コースのリーダーとしてご尽力されました。また、宮崎純夫さんが全体の舞台設計を担当したほか、多くの銀河のメンバーが広報・会場運営などに協力し、コンサート成功の一翼を担いました。
 
 みんなで作り上げたコンサートは感動のうちに幕を閉じましたが、またいつか多くの皆さんと共演できる日が来ることを願ってやみません。
 

 高橋 広

特別寄稿
新たな出発、ふくしまチェロ・コンサート

 
 国内で行なわれた大規模なチェロアンサンブルコンサートは過去5回あり、2015年5月に仙台で行なわれたコンサートで一区切りをつけました。残念な形でNPOは解散しましたが、地震や水害など様々な形で被災された人々に寄り添い、演奏によって復興への励ましや力になれば、という全国のチェロ愛好家の思いは消えることなく継続していました。
 
 今回の「2023ふくしまチェロ・コンサート」に参加されたチェリストと演奏して、そのことを強く実感しました。コンサートの実施に尽力された実行委員の方々に感謝いたします。
 
 コンサート参加人数は当初の目標800人の約半分強でしたが、内容は充実していたと思います。仙台の分奏練習に限っても毎回30人~50人の熱心なチェリストが集まり、仙台での公式練習では指揮の田中健先生のしっかりした分析に基づく具体的な指示と、東京チェロアンサンブルの荒井結さん実演による音楽の表情や、より弾きやすいボウイングの提案などがコンサートの素晴らしい演奏につながったと思います。


 キャラバンについて、私の参加した福島ルートは4ヵ所での演奏で、タイムスケジュールにやや厳しいものがありましたが、お客様の反応がどこも素晴らしく、気持ちよく演奏することができました。事前に現地の担当の方との打合せなど準備がしっかりできていることが感じられました。演奏に参加されたメンバーは13名、1パートでソロ担当の宮腰さんは以前、銀河の練習に飛び入り参加されたことがあり、その腕前には定評がありました。今回も期待通りの立派な演奏で皆をリードしました。メンバーは積極的に演奏に参加する姿勢で、演奏レベルの高く楽しいコンサートでした。
 
 私事になりますが、不注意にも演奏衣装の黒シャツを忘れてしまい、高橋広さんにいろいろとお骨折りいただきました。たまたま居合わせたヤマハ関係の渡辺さんから黒シャツをお借りすることができ助かりました。感謝です。
 
 「150人のチェロ・コンサートin神戸」や大学OBオケでも一緒に演奏した大学の後輩にあたる津田さん、仙台で私のもとでチェロを始め、現在弘前でチェロ活動を楽しんでいらっしゃる赤平さんなど、普段なかなかお会いすることができない人とコンサートを通じて再会できる喜びを感じました。
 
 私たちはコロナの蔓延で不自由な生活を強いられてきました。手放しで安心はできませんが、ようやく収束の傾向が出てきました。様々な災害はもちろん起きては欲しくはないですが、起きることを前提に生活せざるを得ないと思います。災害が起きた時、人々がどのように力を合わせながら復興に尽力できるかを考えておく必要があると思います。

 演奏は人々に生きる力を与えることができる、ということを「2023ふくしまチェロ・コンサート」が示したと思います。 
 
 またいつか、必要な時があれば全国のチェリストが集まって演奏したいと思います。

前嶋 淳
                                      

♪ふくしまチェロコンサート♪

 
 仙台での大規模なチェロ・コンサート以来の大人数でのチェロアンサンブル。前回と同じ曲あり、新曲あり、新曲は譜読みに苦労しました。
 
 仙台での分奏で前嶋先生に細やかな指導をしていただき、福島・仙台の公式練習に参加させていただきましたが、指揮者田中健先生の独特で感覚に訴える指示で、毎回曲が徐々に仕上がっていくのを感じました。
 
 私は福島市出身ですが、体育館には初めて足を踏み入れました。コンサート前日、会場が徐々にできあがり、500人の人が揃い、500台のチェロケースが並ぶ様は圧巻でした。前日練習から本番まで、チェロの音色に包まれた心地よい2日間でした。
 今回のコンサートに参加してとてもうれしかったのは、
①学生の時に同じサークルだったチェロパートの先輩に〇十年降りに会えたこと。(学生の時はフルートパートだったので、チェロコンサートで一緒になったことを先輩に不思議がられました) 
②今回合唱で参加の高校合唱部OGの私。後輩さんと共演できたことと、自分の高校生時代を思い出し、高校合唱の良さを実感したこと。
 
 年明けから、頭の隅に常にあったコンサートが終わり、ちょっと気が抜けましたが、また別の楽譜に向かう日々。チェロを弾くことを楽しもう!と再確認しました。
 

武山郁子

これが本番の音

 
 オープニング曲の「アヴェ・マリア」・・・・・・ 始まりの音が強く印象に残っています。リハーサルの音と、音がまったく異なっているのです。繊細ながら、ピンと張った糸のような、しっかりとした響きが会場を満たしていました。
これが本番の音か。・・・・・・ 私には始めての体験でした。
 
 今思えば、・・・・・・ 静まりかえった会場の中、固唾をのんで音の出るのを待つ観客、耳をこらして自身の出す音に集中する演奏者、この緊迫感の中からこの素晴らしい音が生まれたのだろうと思います。
 
 美しい音色に浸りながら、気持ちよく自分の音を載せる。・・・・・・本当に心地良い時間の中でこの曲を弾き終えることができました。
 

宮崎純夫

思いを馳せながら

 
 震災以降の東北・福島に、またウクライナから避難してきたヤーナ・ラブロワさんが弾く後姿を見ながらウクライナに思いをはせて演奏をしました。
 
 そして高校生の合唱では、これからの社会を担う若者の力強い歌声に感極まりました。
 
 今回、分奏練習から参加者同士の交流を大事にしていただいたことで多くの新しい出会いがあり、また旧知の方々との嬉しい再会があり、チェロで結ばれた縁を感じて温かい気持ちで参加できたコンサートでした。とてもいい経験ができたと思っています。
 

有田久美子

ふくしまチェロ・コンサートに参加して

 
 チェロを始めて間もない頃、テレビのニュースで流れた神戸の大規模なのチェロ・コンサートの映像に、強く感銘を受けました。いつか機会があれば参加したいと、憧れの思いを抱いたまま時は流れ、いつの間にかチェロも弾かなくなってしまいましたが、子育てが少し一段落した数年前にチェロを再開し、今回、福島のコンサートに参加することができました。「心の復興を!」をテーマに、このコンサートは開催されました。そして平和への祈りをこめた演奏会でもあります。福島に向かう車の中で、震災後に数年間福島に住んでいたことを思い出し、不安だった気持ちや、お世話になった方々との楽しい思い出などが溢れてきました。
 
 参加を決めてからずっと500人のチェロの音はどんな感じなんだろう、と想像を巡らせながら、練習していました。本番は東京チェロアンサンブルの方々と福島の高校生の合唱と共演しました。500人が奏でるチェロの音は、想像以上に素晴らしいものでした。自分の身体も共鳴していのでは?と思うほど音が自分の中で響く様な不思議な感覚がありました。一曲弾き終えるたびに終わって欲しくないと思いながら、じっくりと流れていく時間を味わいながら演奏しました。また、憧れの東京アンサンブルの方々と演奏できたことがとても光栄でした。
 
 そして福島の高校生のエネルギー満ち溢れる、澄みきった歌声とチェロの音色が相まって、唯一無二の音楽になったのではないかと思います。
 
 最後に、仙台での練習を指導してくだいました前嶋先生、一緒に演奏した皆様、ありがとうございました。
 
 念願だった500人のチェロ に参加できたことを本当に嬉しく思います。魂が震えるようなあの音はきっと一生忘れないでしょう。
 
 震災から年月は経ちましたが、いつまでも忘れず、チェロが弾ける平和な環境に感謝しつつ、これからも生涯チェロを続けて行きたいと思います。
 

村井愛

またいつか、再演を!

 
 「2023ふくしまチェロ・コンサート」公演から半月。今も余韻が残ります。私自身の反省は多くありますが、最前列で演奏する幸運にも恵まれ、とても感動的で幸せな時間となりました。福島の地で田中健先生指揮の下、憧れの東京チェロアンサンブルの先生方と手の届く距離で演奏を重ね、音楽を作り上げた体験は忘れることはないでしょう。地元高校生による合唱との共演も心揺さぶる素晴らしい音楽となり記憶に刻まれます。
 
 この音楽に乗せた私たちの鎮魂と復興への祈りが福島の方々に僅かでも届いていれば、500人のチェリストの一人としてかけがえのない幸せです。
 
 この日のために文字通り東奔西走された実行委員の方々、ボランティアの方々に感謝いたします。
 
 またいつの日かみなさまと一緒に、このようなコンサートを再演できることを願ってやみません。
 

鹿俣晶彦